注意欠如・多動症(ADHD)
物をなくす、気が散りやすい、やるべきことを忘れる、話を聞いていないように見える、何かを始めてもすぐ脱線する、片付けが苦手、時間の管理ができない、締め切りを守れない、課題を集中してやり遂げることができない、ソワソワ落ち着かず立ち歩く、喋りすぎる、人の話が終わる前に話し出す、順番が待てないなどの
不注意・衝動性・多動性が幼少時から生じているという特徴があるときにADHDの診断を考えます。
多動性は大人になるにつれて目立たなくなりますが、不注意や衝動性は大人になってから問題が目立つこともあります。また、ADHDの特徴が「好奇心旺盛でアイディアが豊富で行動力がある」というような長所や強みになっていることもあります。
原因は、遺伝的な要因や環境的な要因が影響して脳の機能に障害が生じていると考えられます。順序だてて行動したり行動を抑制する脳の働き、より大きな報酬を得るために待つことをする脳の働き、タイミングや時間の感覚を制御する脳の働き、安静にしているときの脳の働きなどが低くなっています。
生活上困難が生じていて治療が必要な場合は、薬物治療や認知行動療法などを行っていきます。家族に対してペアレントトレーニングを行う場合もあります。
薬物治療では、コンサータ(メチルフェニデート塩酸塩)、ビバンセ(リスデキサンフェタミンメシル酸塩)、ストラテラ(アトモキセチン塩酸塩)、インチュニブ(グアンファシン塩酸塩)などの薬物が使用されます。流通管理システムに登録していないため当院ではコンサータ、ビバンセの処方はしておりません。
コンサータは効き目が比較的早く現れ、12時間ほど効果が維持し、有効性も比較的高いと考えられます。強い不安や重症のうつ病、運動性チックやトゥレット症候群の患者さんなどには使えません。乱用の危険性や長期の使用で成長が遅延する可能性があり、使用に際しては流通の管理が必要です。
ストラテラは効果が出るまで期間が長く、飲み始めてから4−12週かかることもあります。コンサータでは使用できないチック障害や強い不安や緊張のある方、重症のうつ状態の方に使うことができます。自殺関連の行動が増える可能性があるので注意が必要です。
インチュニブは一日一回服用のお薬で、ストラテラよりは効果が出るのが早いです。血圧低下や徐脈、失神、眠気の副作用の可能性があります。
認知行動療法では、認知のゆがみを修正する訓練や、マインドフルネス、生活スキル・ソーシャルスキルの訓練、優先順位をつけたり整理整頓する訓練、集中力を付ける訓練、リラクセーション法などを行っていきます。
ペアレント・トレーニングとは子供の行動が変わることを目的に、親がほめ方や指示の仕方の養育スキルを獲得するためのトレーニングです。