登校困難 (不登校)

不登校とは「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの」という定義です。

2019年度のデータで小学生の120人に1人、中学生は25人に1人程度いるそうです。

不登校の定義だと病気が入らないので、タイトルには登校困難と書きました。

精神疾患、例えばうつ病や強迫性障害、統合失調症などの症状のために登校できなくなっているのであれば、その治療が必要です。

もし、自閉スペクトラム症や注意欠如・多動症などが背景にあって学校生活が困難になっているのであれば、特性を周囲が理解したり援助について相談していくことや薬物治療を行うことなどが考えられます。知的能力障害があることが影響していることもあります。場合によってはIQ検査などの心理検査が必要になるかもしれません。(複雑なので当院では実施できません)

起立性調節障害という病気ではないかと考える人もいます。これは自律神経の機能がうまく働かないことで不調が起こる身体疾患ですが、実際は心因性(心理的な原因によるもの)にも自律神経症状が起きたり、不登校で活動量が低下したために自律神経機能が低下して起立性調節障害を引き起こすこともあるので、区別は難しいこともあります。

でも「心理的なものが原因ならば自分でコントロールできるのではないか」とか「怠けてるのではないか」などと誤解されたり、自分でもそう思い込んで余計なストレスを感じることもあるので、体の病気で登校できないんだという捉え方をしていく方が、問題が外在化されて、自分を責める気持ちが軽減したり、周りからの理解が得やすくなることもあります。ただし病気だからと親が過保護になりすぎてしまったり、子供も依存的になってしまうこともありえます。

また、そうした病気や障害には当たらないけれど、具体的な悩みや問題を抱えていることもあります。

生徒間での人間関係のトラブルや、先生の対応や相性の問題が語られる時もあります。

家で両親が不仲であったり、離婚や死別して不安があったり、モラハラやDV、虐待があったり、過干渉があったり、親が精神疾患や余裕がない状態で子供を振り回していたり、子供が親や他の兄弟の世話をしているような環境であることもあります。

側から見たら家庭の事情が影響しているのではないかなと思っても、奇妙なほどそこには触れず、内省もなく、学校や本人の問題ではないかとか医療で治せないのかという話をされる親御さんもいます。

学校や関係各所を交えたケース会議をすることもあります。

原因やきっかけがどれか一つではなくて、色んなことが少しづつあるのかな、という場合もあります。

何かは問うてもないけど、なんとなく行けないという子もいます。

学校に行く日の朝だけお腹が痛くなったり体調不良になる子もいます。

休み始めた時、疲れ切って限界になっていることもしばしばあるので、一旦休んで気力を充実させることを考えます。不安や不信感で警戒していることもあるので安心感が出るまで、しばらく周りも焦らずに見守る・待つことが必要な時もあります。

その際に親御さんが不安や心配で苦しむことがあります。親御さんが子供や家族・学校への本音を吐き出すことや、家族関係を見直すこと、カウンセリングや治療を受けること、学校の先生や親の会などとの繋がりを作って視野を広げることなどが、必要なこともあります。

不登校が長引いてきたときには、出来るだけ生活リズムを保つ、できれば外に出て体を動かす、フリースクールに行くなど社会の中で居場所や所属感を感じる場所や関係を作ることなど考えていきます。

勉強もできるのであれば進めて行けば良いですが、プレッシャーになるのであれば出来る範囲で良いと思います。

高校や大学進学などのタイミングをきっかけに、毎日登校できるようになる人も少なくありません。

少し前のデータですが、H18年に不登校だった中学3年生の85.1%が高校に進学しており、20歳の時点で就学も就業もしていない割合は18.1%であるなど、8割以上の人が後に学校や仕事に行っている結果となっています。

そして不登校を振り返って「休んだことで今の自分がある」「成長した・視野が広がった」「人に優しくなった」などの前向きな思いを持つことができるようになっている人もいます。

小学校・中学校は出席しなくても卒業できますが、高校は出席しないと退学になってしまいます。

登校して別室や保健室で過ごすとか、レポート提出で評価するとか、最近ではオンライン授業で対応してくれる学校も増えてきているので、そういった対応をしてくれないかどうか、相談してみてもいいと思います。また、通信制への転校や高卒認定試験なども柔軟に考えていく必要があります。

将来、経済的に問題なく、楽しみを見つけて充実して暮らすためのルートは一つではありません。

コロナの影響で在宅での仕事も一気に広がり、最近はAIの発展もすさまじく、従来の学歴による評価や出社の必要性がどんどん変化して行っている社会と感じます。

働き方や学び方も多様化し、必要とされる仕事や能力も変わっていっており、その都度、考えていかないといけないのは不登校の子だけに限らないと思います。

クリニックでできることには限りがあるかもしれませんが、気になることがあれば、お気軽にお越し下さい。

また、市や教育支援センターでも相談事業を行っているので、相談されるのもよいと思います。

箕面市:https://www.city.minoh.lg.jp/edu-center/zigyou/soudan.html

参考:不登校の理解と支援のためのハンドブック