更年期障害

女性の更年期障害がおこるのは閉経前後、平均すると45-55歳頃となります。

12ヶ月以上月経がないか、あるいは、子宮を摘出した方などで月経で判断できない場合には、血液検査の値で、閉経したかどうかを判断します。

更年期にはエストロゲンという女性ホルモンが減少するのですが、エストロゲンは不安感ややる気に関する脳内の神経伝達物質の代謝に影響を与えるため、うつ病が発症しやすくなります。

また、45−55歳頃というのは、子供が成長して巣立っていき、夫が退職して家にいるようになるなど生活が変化したり、親の介護や看取りなどが生じたり、自分の体力が下がり容貌も変化して老いを感じ始めるようになるなど、不安やストレスを感じやすい年代です。そのことも更年期にうつ病を発症しやすい原因の一つとなっています。

更年期障害では、血管の収縮や拡張に伴って、ほてりやのぼせ(ホットフラッシュを呼ばれます)などの症状が出たり、不安、不眠、うつなどの精神的な症状、その他にも尿もれ,頻尿,性交痛、肩こりなど様々な症状が生じますが、約80%が2年以内に自然軽快します。

更年期障害の治療としては、ホットフラッシュに対してホルモン補充療法を行うことを考えます。漢方薬なども使用されます。

精神的な症状に対しては、抗うつ薬や抗不安薬などの使用を考えますが、ホルモン補充療法を行うことで精神的な症状も改善することもあります。(当院ではホルモン補充療法は行なっておりません)

また、逆に、抗うつ薬がホットフラッシュに効果がある場合もあるので、ホルモン補充療法が使えない人のホットフラッシュ改善のために、抗うつ薬の使用を考えることもあります。

精神科で行う治療としては、更年期であったとしても、基本的には、うつならうつの症状に対しての治療となります。

更年期障害を疑う時は、まずは婦人科で検査を行い、体の病気ではないかどうかの確認(甲状腺機能異常などでも似たような症状が出ることがあります)やホルモン補充療法の必要・適応があるか確認していただき、

婦人科の医師と相談の上で、当科への受診をしていただければと思います。

参考:前林 亜紀, 更年期障害, 日大医学雑誌, 2021, 80 巻, 4 号, p. 177-180, 髙橋 彩子, 岡島 由佳, 飛田 真砂美, 高山 悠子, 平田 亮人, 谷 将之, 岩波 明, 更年期障害と更年期に好発する精神疾患, 昭和学士会雑誌, 2017, 77 巻, 4 号, p. 379-384