自閉スペクトラム症(広汎性発達障害)

幼少時から以下の様な特徴などが見られており、そのことで困りごとが生じており、

診断をする意味や必要があれば、診断を考えます。

・対人的に異常な近づき方をする

・通常の会話が成り立たない

・興味や感情を共有することが少ない

・想像力に欠けており、人の気持ちや考えを理解したり共感することが苦手

・視線や身振り、顔の表情が不自然

・言葉のイントネーションが独特

・友人付き合いがない。仲間作りに興味がない

・興味や行動が限定されており、こだわりが強い。

・単調な繰り返しを好む

・数字や名称などに興味を抱く

・予定や習慣が乱されると動揺し、柔軟に対応することが困難。変化を嫌う

・感覚の刺激に過敏、あるいは極端に鈍感

診断に際して明確なラインがあるわけではなく、状況や年齢などによって出てくる特徴も変化しうることや、以前は別れていた疾患概念をまとめた総称であることなどから、「スペクトラム」という表現になっています。

能力にばらつきが大きいことがあり、能力の高い方で全体を見積もられてしまい、誤解されることもあります。

また、本人が苦手なところをカバーしようとして多大な努力をして疲れ切ってしまう時もあります。

疲れ切って精神的に不調となったり、苦手なところをカバーしきれなくなりトラブルが生じて、精神科・心療内科に来ることになって初めて、大人になってから障害が明らかになることがあります。

自閉スペクトラム症の原因ですが、生まれつき脳に機能障害があって発症します。

関連する遺伝子があると考えられており、妊娠中にウイルスに感染したりバルプロ酸を服薬しても発症リスクが高くなります。

治療・対応としては、

・注意をそらす刺激を少なくするなど環境を調整すること

・療育やデイケアに参加するなどしてソーシャルスキルを身につけること

・自閉スペクトラム症によって生活上にストレスが生じ、うつ病などの精神障害が生じているのであれば、その治療をすること

などが挙げられます。

刺激への敏感さや興奮を落ち着かせるために、ドーパミンを調整する薬を少量用いることもあります。

グルテンのみ、もしくはグルテンとカゼインを除去した食事が症状緩和に有効という報告もありますが、まだ研究段階です。

自閉スペクトラム症のある方に物事を伝える際には、

・感情的で曖昧な言い方を避けて具体的な内容で話す

・数値などを示す

・しっかりとルールを明示する

などが有効です。

また、聴覚よりも視覚からの情報の方が入りやすい傾向があるので、

・伝えたいことを文章にする

・わかりやすい図にして示す

ことも考えられます。

人付き合いに悩んで発達障害ではないかと考えて受診する方の中には、診断がついて「自分のせいではないと思えて気が軽くなった」という人もいます。

「自分のせいではなくて病気のせい」と考えることで気分の不安定さが改善するのであれば、それは有効な対応策の一つではありますが、

この障害と本人は完全に別のものとして切り離せるものではなく、障害とされる特徴を含めて、その人自身であると考えられます。

自閉スペクトラム症の診断というものは、よほど重度でなければ、絶対的なものではなく、

・自分の特性を障害として捉えることで困り事への対応が取りやすくなる

・他人に伝わりやすい、理解してもらいやすくなる

ためであるとか、

・医療的、社会的なサポートを受ける際には必要なもの

というように考えてもよいのではないかと思います。

たとえば診断を受け、精神障害者保健福祉手帳を取得し、障害者雇用での就労を考えることもあります。理解ある環境で仕事を続けていくことは、安定して過ごすためにとても大事です。

薬物治療をしたりデイケア等に参加してリハビリをしていく際にも、診断に沿って考えていくので診断は有用です。

参考:DSM5,ここは、日本で一番患者が訪れる大人の発達障害診療科、精神医学2023Vol.65No.5、精神診療プラチナマニュアル